第16回(2019年度)中国建築文化賞について

2019年度の中国建築文化賞には住宅部門1件,意匠部門2件の計3件の応募があり,選考委員会で厳正に審査を行った結果,次の2作品について表彰することに決定しました。当該賞の創設主旨を十分満たす作品,活動となっています。なお,2019年度の中国建築文化賞の表彰式,受賞者による講演会を以下のように予定しています。

日時:2020年6月5日 午後
場所:広島県情報プラザ 地下多目的ホール
(同日開催の中国支部総会において。)

① 住宅部門「カイヅカイブキのある家」(岡山県岡山市)
受賞者:神家昭雄(神家昭雄建築研究室)
この住宅はJR岡山駅から車で10分ほどの閑静な住宅地の奥にある。この建物は老朽化した住宅の建替えであるが,敷地のほぼ中央にある「もみじ」や「杉」を残すことで生まれた小さな中庭を囲むように平面計画されている。外壁面が雁行し,深い軒と窓の位置や大きさを調整することで庭との親密な関係をつくりながらも,隣家との適度な距離感を生み出している。地元の大工・左官・建具職人などが持つ伝統的な技術を使い,桧・杉・土などの県産材を積極的に用いている点で文化的側面が高い。木材の文化,木造建築のすばらしさ,湿式壁面仕上げなどわが国古来の建築文化に加え,外断熱や床暖房などの現代技術を融合している点において高く評価できる。(撮影:笹の倉舎/笹倉洋平)

② 意匠部門「大崎海星高等学校 管理棟」(広島県豊田郡大崎上島町)
受賞者:仲子盛進綜合環境デザイン・ナフ・アーキテクトアンドデザイン設計共同体 中薗哲也
大崎上島では,木造船の舟大工の技術はもとより,日々の生活の中で密接に木と関わり,またその文化を育んできた歴史と社会性が保たれている。このような歴史と文化を背負った地域において,将来を担っていく子供たちの教育の場としての学校のあるべき姿が模索された。テーマは「自然の恵みを活かす木造校舎の整備」。集成材に頼らず県産杉無垢の定尺小径木材を主構造に利用することで,人体や環境への負荷を抑え,安全で健康な校舎がつくられた。この建築づくりに携わった人々,この建築で歴史を学んだ人々を通して地域文化が培われ,地域が,人が進展していく可能性を感じる。これに続く建築がこの地域で建設され,蓄積が増す過程でこの建築の文化的価値も高まっていくのではないだろうか。

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