第15回(2018年度)中国建築文化賞について

一般社団法人日本建築学会中国支部では、中国地方の建築文化の発展に顕著な貢献が認められる活動に対して表彰し、広く地域文化の発展と建築文化に対する意識の高揚を図ることを目的とした「日本建築学会中国支部建築文化賞表彰制度」を平成16年度に創設した。第15回目となる昨年度は次の3テーマの取組みを表彰することに決定した。当該賞の創設主旨を十分満たす優れた作品、活動であり、これらを以下に紹介する。

① 住宅部門「上山の家」(岡山県美作市)

受賞者:神家昭雄(神家昭雄建築設計室)

岡山県の中山間地区に存在する住宅であり、その立地を活かした眺望と周囲の自然条件を意匠に取り入れた個性的な住宅である。
今回の選考において高評価のポイントは設計者の意図を超えた建築主の利用方法であった。具体的にはこの住宅からの眺望、周辺の自然環境および建築主のライフスタイルなどをSNSなどで用いて情報発信し、多くの来訪者とともに、その魅力を共有していることである。このように建築を利用した生活文化をユーザーの立場で情報発信し、多くの閲覧者から高評価を得ることは新しい建築の評価方法であり、一般市民の建築文化醸成の新しいプロセスであるとも考えられ、中国建築文化賞としてふさわしいといえよう。(撮影:笹の倉舎/笹倉洋平)

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② 意匠部門「くらしき町屋サロン」(岡山県倉敷市)

受賞者:山田暁(暁建築設計事務所)

倉敷市の美観地区の空き家跡地を有効に利活用し、美観地区の景観を損なわない町屋風の建築物を新築するとともに、既存竹林を利用した庭園を整備し、カフェ、レストラン、イベントスペースによる憩いの場を提供している。
さらにこれらを利用したコンサートや芸術作品の展示など各種イベントが数多く開催されている。当該建築と竹林を有する庭園の意匠は美観地区の雰囲気とも調和しており、完成後も文化的要素を多く含む活動を展開していることから中国建築文化賞としてふさわしいといえる。

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③ 人物団体部門「NPO法人まちのよそおいネットワーク&山口近代建築研究会」

理事長:原田正彦

山口県内に残された「近代建築」を巡る様々な課題を中心に、県民、民間企業、行政が一体となり、講演会、勉強会、市民参加型イベント、保存運動など様々な企画を通して建築文化を向上させる継続的な活動である。
特に村野藤吾設計の渡辺翁記念会館や武田五一設計の山口県旧県庁舎などを題材にした多角的な活動は参加者の建築文化の向上に大きな貢献があるものと考えられる。また近年世界遺産登録された県内の近代産業遺産に関する活動も継続的に実施され、中国建築文化賞としてふさわしい活動であるといえる。

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●30年度審査員(敬称略)

川上善嗣・寺井雅和・田中輝幸・清水保雄・宮地正人・角倉英明

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