2023年度の中国建築文化賞には,住宅部門1件,意匠部門3件,人物・団体部門1件の計5件の応募があり,選考委員会で厳正に審査を行った結果,次の3件を表彰することに決定しました。
表彰作品・活動が表彰規程第1条(目的)における「中国地方の建築文化の発展に顕著な貢献が認められる活動」であり,「広く地域文化の発展と建築文化に対する意識の高揚を図る」ことに寄与され続けることを期待しています。なお,2023年度の中国建築文化賞の表彰式,受賞者の講演会を上記のとおり予定しています。
日時:2024年5月24日(金)午後
場所:広島県情報プラザ(広島市中区) 地下多目的ホール
(同日開催の中国支部総会において。詳細は支部HPでご確認ください。)
————————————–
■意匠部門:「白島九軒町のアトリエ」(広島市中区白島九軒町23-17)
■受賞者:吉田豊(吉田豊建築設計事務所)
街中にありながらひらけた場所にあるこの建物は,4面が丁寧にデザインされた裏表のない立面となっている。道路に面する北側ファサードは,セットバックしたテラスを配置し,その外側をエキスパンドメタルの皮膜で覆うことで街との柔らかな緩衝帯を設けており,周辺と調和しつつも不思議な存在感を放つ建築となっている。断面構成においては,ボイドスラブ+薄肉ラーメン構造の採用とスキップフロアにより,単純な版で構成された各階が視覚や空気で連続的に繋がっており,様々な雰囲気を持った空間を内包する緻密な建築となっている。(写真提供:吉田豊(吉田豊建築設計事務所))
■意匠部門:「ひのっ子ホール」(広島市安芸区船越南2-2100)
■受賞者:沖本初(沖本初建築設計事務所)
敷地南側の三角形状に合わせた低層部の中央に楕円高層部を配置した音楽ホールである。楕円形状のホールの周囲にホワイエや事務所などが配置されており,機能的で明解な平面・断面計画となっている。ガラスと列柱により垂直線が強調された建物正面のホワイエと,ホール上部のあたたかみのある楕円曲線との対比によって,音楽ホールとしての存在感と上品さが表出されている。建物のボリュームをコントロールすることで地域になじんでおり,社内での定期的な演奏会の他に地域住民の集会や発表会のために使用されている。今後も地域文化の発展に貢献し,周囲の住民からも親しまれる建築となるであろう。(写真提供:沖本初(沖本初建築設計事務所))
■人物・団体部門:「広島工業大学建築・環境系学科同窓会五三会」
■受賞者:広島工業大学建築・環境系学科同窓会五三会
1975年度より学生設計コンペ「五三会建築設計競技」を主催しており,広島県発の学生設計コンペながら,50年もの長きにわたり継続している。様々な媒体を活用して全国に公募情報を発信し,今や中国地方にとどまらず,日本全国から応募のある設計コンペとなっている。現状に満足することなく,中国地方でしかできない設計競技の開催方法・課題づくりや建築学生の意識向上などに重点を置いた実施のあり方などを模索し続けている。建築文化の継承者であり発展の担い手でもある志の高い建築学生のために,今後も中国地方発ならではの魅力的な学生設計コンペのあり方を提示し続けてくれることを期待したい。(写真提供:藤森雅彦(藤森雅彦建築設計事務所))
以上