第21回(2024年度)中国建築文化賞について

2024年度の中国建築文化賞には,意匠部門4件,人物・団体部門2件の計6件の応募があり,選考委員会で厳正に審査を行った結果,次の3件を表彰することに決定しました。表彰作品・活動が表彰規程第1条(目的)における「中国地方の建築文化の発展に顕著な貢献が認められる活動」であり,「広く地域文化の発展と建築文化に対する意識の高揚を図る」ことに寄与され続けることを期待しています。なお,令和6年度の中国建築文化賞の表彰式,受賞者の講演会を下記のとおり予定しています。

日時:2025年5月30日(金)午後

場所:広島県情報プラザ(広島市中区) 地下多目的ホール

(同日開催の中国支部総会において。詳細は支部HPでご確認ください。)

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■意匠部門:「かも保育園ハッチェリー」(東広島市西条町御薗宇5557−1)

■受賞者:長谷川統一(杉田三郎建築設計事務所)

南に向けて開けた敷地に計画されたこの建物は、建築形状に対して45度グリッドの格子屋根架構を採用することで、朝、昼、夕方といった一日の光の変化に対応し、多様な室内環境を提供できるようデザインされている。これは、保育園としての多機能性と柔軟性を高める設計意図に基づくものである。構造材としてはすべて90mm角の小断面材を用い、それらを組み合わせることで剛性梁を形成し、屋根架構を構成している。この設計は木材資源を効率的かつ効果的に活用しており、持続可能性の観点からも優れたアプローチといえる。また、45度グリッド構造を活用して、各年齢層に対応する教室を計画的に配置することで、空間の広がりと多用途性を実現している。この建築計画は、自然光を積極的に取り入れることで開放的な保育環境を提供する新たな試みであるとともに、地域コミュニティとの連携を視野に入れた設計である。これにより、地域社会との関係強化を図るとともに、建築が地域の発展に寄与することが期待される。(写真提供:杉田三郎建築設計事務所)

 

■人物・団体部門:「備後表継承会」

■受賞者:備後表継承会

備後表継承会は、2018年4月に設立された団体であり、備後地域産のイグサを原料とした備後表(畳表)の継承を目的として活動している。かつて盛んであった日本の畳文化は、近年の生活様式の変化によりその需要が減少し、現在ではイグサや畳表の約80%が海外産となっている。本団体はこの状況を日本建築文化にとって重要な課題と捉え、国産イグサの栽培から畳表の製造、流通、畳工事に至るまで、一連のプロセスを実践しながら精力的に活動している。備後地域を拠点とした本会の取り組みは多岐にわたり、特に備後表の保全・継承において成果を積み上げており,イグサ・畳表の普及啓発と共に地域の建築文化の継承に寄与する人物団体と思われる。(写真提供:佐藤圭一・備後表継承会)

 

■意匠部門:「SOIL SETODA」(尾道市瀬戸田町瀬戸田254-2(改修)/257(新築))

■受賞者:小林亮大(株式会社しおまち企画),堀内剛一郎(株式会社稲冨堀内建築事務所)

瀬戸田の「しおまち商店街」を活性化するためのプロジェクトの一環として、2021年4月に建設された複合施設であり、宿泊、飲食、観光案内所、ラウンジスペースを備えた多機能な建築である。この地域はかつて塩の生産が盛んであり、その生産活動により独自の文化と街並みが形成された。しかし、港の利用方法や産業構造の変化に伴い、その風景も次第に変化してきた。本施設は、この地域が持つ歴史的文化を新たな時代に継承するための拠点として計画された。周辺観光を取り入れるだけでなく、サイクリングを通じて訪れることができる、スローで非日常的な体験を提供する場を目指しており,海外からの宿泊もある。さらに、開放的な建築空間によって訪問者に地域の魅力を体感させる設計がなされている。この施設は、地域住民と観光客の双方に親しまれる建築として、新たな地域文化の発展と継承に貢献することが期待される。(写真提供:堀内剛一郎・㈱稲富堀内建築事務所)

 

 

 

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